転職活動を始めるきっかけとして、自分の市場価値を測るという理由は少なくありません。同僚の転職を機に、自分の市場価値を知っておこうと考えることもあるでしょう。少子高齢化の進行や職種の多様化、賃金格差などの要因もあり、一部の業種では長い間人手不足が深刻です。市場ニーズに合致する人材であれば、新型コロナ以降も市場価値や賃金は上昇傾向にあります。
コロナ禍を超えて進む人材不足
日本標準産業分類(平成25年10月改定)16大産業を対象に実施された調査結果「令和2年転職者実態調査の概況」(厚生労働省)によれば、「今後3年間の転職者の採用予定等」の項目で『転職者を採用する予定がある』割合は53.3%と半数を上回っています。産業別では建設業(69%)、運輸業・郵便業(66.7%)、情報通信業(66.4%)と続きます。大手を中心に、インフラ整備、物流やITで人材が不足しているのは顕著です。賃金アップが転職の主な理由であれば、このような産業別の需給バランスを事前に確認しておくと良いでしょう。
また、今後3年間に採用予定の転職者の職種では専門的・技術的な仕事(45.2%)、サービスの仕事(28.1%)、販売の仕事(24%)が多いです。一番多い専門的・技術的な仕事では【医療・福祉】(80.8%)、【情報通信業】(80.4%)、【学術研究・専門・技術サービス業】(79.5%)が高くなっています。サービスの仕事は【宿泊業・飲食サービス業】(76.6%)が最も高いです。
絶対的な市場価値というのは、需給のバランスで決まります。社会環境や情勢で決定する部分も少なくないため、時代が変化してもなるべく毀損しないスキルや経験を身につけることが重要です。世間で話題にのぼるニュースやメディアで頻繁に取り上げられる情報はすでにピークアウトしているケースが多いので、そのような情報の外側にアンテナを張ることも大切です。
転職者に求められる価値は時と状況によって変化します。自分のあるキャリアにニーズがあると思ってもそれほど求められていなかったり、想定していなかったキャリアが役に立つ場合もあります。そのため、キャリアの棚卸しをきちんと実施し、資料に落とし込むことが必要です。記憶の整理や脳のスペース確保にも書き出すことが重要です。こういった作業を丁寧に実施し、ご自身の市場価値を最大限に引き出してください。
ひとりでは難しい場合は、ためらわずにリクルートエージェントやdoda、マイナビエージェント等、レジュメに関してもアドバイスなどを受けられるエージェントサービスの利用がおすすめです。
転職はミスマッチの可能性やギャップを知る機会
転職の理由は個々人によって様々です。賃金が安い、休みがない、残業が多いといった現状への不満から、キャリアアップや職場環境の改善、ライフスタイルの変化といった発展的な理由まで、多岐にわたります。人間関係の問題や地震などの環境変化も理由の一つとして挙げられます。
求職者の視点で考えると、多くの転職理由がありますが、募集側にも様々な理由が存在します。単純な欠員補充から、事業拡大、新規事業のための経験者要員、役割の明確化など、さまざまな目的があります。さらに、社風やチームに合うかどうか、継続力や持続力といったパーソナリティも重要な選考基準となります。
書類選考や面接を通じて、転職活動時には転職コーディネータや応募先企業の面談者など、多くの社外の人々とコンタクトが増えます。新卒以来の就職(転職)活動の場合、社内の価値観やルールが基準になりがちですが、他社の社風や企業文化に触れることで、新たな視点を得るチャンスでもあります。
こうした機会に、他社の常識やルール、自社との相違点を中心に情報収集しておくと、自身が就業した場合のイメージがしやすくなります。ひとつの会社や業界に長くいると当然だと感じることも、他所では常識ではないことが多いものです。そのギャップを知ることで、自身の市場価値を再認識し、適切なキャリアパスを描く助けとなります。
現在転職を考えていない場合でも、いざというときのため、また自分の現在地を知るために、まずは転職活動をしてみるのがおすすめです。2020年から2022年にかけて求人が明らかに増加傾向を示し、総じて人材不足な状況です。現在の給与や待遇を上回る職場に出会うチャンスがあるかもしれません。社会情勢は外的要因で常に変化するため、転職に向いている間に動き始めることをおすすめします。
転職活動成功のための具体的なステップ
転職市場の現状と自己の市場価値を理解した上で、次に必要なのは具体的なアクションプランです。以下のステップを参考に、転職活動を成功に導きましょう。
1. キャリアの棚卸し まず、自分のスキルや経験を整理しましょう。これまでのキャリアの中で培ってきた強みや実績をリストアップし、どのような価値を提供できるか明確にします。これにより、自分に合った求人を見つけやすくなります。
2. 情報収集 転職エージェントや求人情報サイトを活用して、市場動向や企業情報を把握しましょう。特に、自分が興味のある業界や企業について深く理解することが重要です。SNSや口コミサイトも利用して、実際の働き方や企業文化についても情報収集しておきましょう。
3. ネットワークの活用 知人や同僚とのつながりを大切にし、業界内での情報交換を行いましょう。特にミドル世代では、人脈が大きな助けとなります。業界イベントやセミナーに参加することで、新たな人脈を築くことも可能です。
4. 応募書類の準備 職務経歴書や履歴書は丁寧に作成し、自分の強みや実績をアピールできる内容にしましょう。特に40代以上では、ビジネスマナーにも注意が必要です。具体的な成果や数値を用いて、分かりやすくアピールすることが求められます。
5. 面接対策 面接では自分の経験やスキルだけでなく、企業への貢献意欲も伝えることが求められます。PREP法(Point, Reason, Example, Point)などを活用して、論理的に話す練習をしましょう。面接前に模擬面接を行い、フィードバックを受けることも効果的です。
転職活動から見える自己の市場価値
市場価値は需給バランスによって決定されるため、絶対的な価値は存在しないと考えるべきです。スキルや経験という付加価値を持っていることは重要ですが、それだけで市場価値が必ずしも上がるわけではありません。
転職にチャレンジする際には、0からスタートするのではなく、まずは転職活動を通じて自身のスキルや経験の棚卸しを行い、市場価値やメリット・デメリットを把握することが大切です。転職活動をすることで、自分の強みや弱みを再確認し、適切なキャリアプランを描く手助けとなります。
最終的には、市場のニーズに応じたスキルや経験を持つことが成功への鍵となります。常に変化する社会状況や業界動向にアンテナを張り、自分自身をアップデートし続けることが重要です。まずは一歩を踏み出し、自分の可能性を最大限に引き出すための準備を始めてみましょう。
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